お知らせ
〇トーク内容報告 【特別イベント】トークでつなぐ!新・旧 毎日新聞京都ビルのこれから
去る11月9日の朝、丸太町の現毎日新聞京都支局にて、京都モダン建築祭特別イベント「トークでつなぐ!新・旧 毎日新聞京都ビルのこれから」を実施しました。
会場には事前にご用意していた椅子では座りきれないほどたくさんの方々にお越しいただき、旧支局である1928ビルの竣工からの歩み、30年前の移転以降に続くアートとの関わり、そして現在の我々の取り組みについて熱心に耳を傾けてくださいました。
トークの最後には、元支局員の方々からも貴重なお話を伺うことができ、今後の活動の新たな布石をいただけたように思います。
イベント後にはスライドショーも上映し、1928ビルとのつながりを感じていただく時間となりました。
お越しくださった皆さま、モダン建築祭のスタッフの皆さま、毎日新聞京都支局ならびに元支局員の皆さま、本当にありがとうございました。
2025年11月9日(日)10:10 ~ 11:10
於 毎日新聞京都ビル 7Fホール
髙尚赫(同時代ギャラリー オーナー)
清山陽平(京都大学)
成原隆訓(京都大学)
──────
【以下内容要旨】
旧毎日新聞京都支局(現1928ビル)の建設と毎日新聞移転まで
京都大学 清山陽平
- 1928ビルの現在
3Fにギア、2Fに同時代ギャラリー、B1FにはINDÉPENDANTS
- 旧・旧 毎日新聞社京都支局
旧毎日新聞社京都支局のビルが建つ以前、同じ場所に町家の旧・旧支局が存在した。当時の内部の写真には支局長の岩井武俊の姿がある。
- 旧毎日新聞社京都支局 解説
設計者:武田五一
施工者:大林組
構造規模:RC造 / 地上3階地下1階
竣工年:1928(昭和3)年8月
所在地:京都市中京区三条通御幸町東入ル
京都市登録有形文化財(1983年6月1日)
新旧のモチーフを混淆させつつ、当時の最新の潮流であったアール・デコの感覚で巧みに統一した、いかにも武田五一らしい優品である。(「展覧会 もうひとつの京都ーモダニズム建築から見えてくるもの」カタログ, 京都工芸繊維大学美術工芸資料館, 2011)
- 旧毎日新聞社京都支局 設計図・当初の写真
各階の平面図(地下の食堂、理髪室などに社外の人が入ってくる計画が想定されていた跡がある)
3F講演室の様子(河井寛次郎こけら落とし展示)
2F会議室での上賀茂民芸協団会合
2F編集室が動いていた頃の様子
- 旧毎日新聞社京都支局から1928ビルへ(住宅地図年表)
いよいよ1999年に1928ビルへ。様々な芸術活動の拠点施設へと変化し現在に至る。
3階講演室はアートコンプレックスからギアへ。
2階はカフェなどのテナント利用をへてギャラリーに。
1階はギャラリーやラジオカフェなど。地下1階はアンデパンダンやレコードショップ、アーティストの事務所など。
──────
1928ビル・同時代ギャラリー・アンデパンダン ― 歴史と再生の物語
同時代ギャラリー代表・髙尚赫
- 同時代ギャラリーの誕生と1928ビルの危機
1996年、毎日新聞京都支局1階に「同時代ギャラリー」がオープン。
しかし2年後、新聞社移転に伴いビルは取り壊しの危機に。
ギャラリーとアーティストたちが建物の価値を伝え、存続運動へ。
建築家・若林広幸氏がビルの魅力に惚れ込み、買い取り・再生を決断。
- 建物の“再生”に起きた奇跡
地下は水が膝まで溜まり、修繕は「1億円必要」とされ、誰もが困難と思った。
若林氏らが地下の配管を調査中、突然「ボンッ」という音とともに水が引き始め、数分で完全に排水。
この出来事をきっかけに再生プロジェクトが本格化し、建物は蘇った。
- 1928ビルの建築的魅力
設計:武田五一(「関西建築界の父」)。
アール・デコ様式、1983年に京都市登録有形文化財に指定。
職人の手仕事による“ゆらぎ”や温かみが残る建築。
大きな窓、アール天井、タイル床、太い柱など創建当時の意匠が現存。
- アンデパンダンの再生と文化的役割
1998年、アーティストたちの手で廃墟同然だった地下を復元しオープン。
内装は創建当時の美しさを尊重し、余計なものを足さない姿勢で再生。
進駐軍時代の米兵が描いたとされる壁画も発見される。
“indépendant(独立・無所属)”を理念に、食・文化・芸術が交わる拠点となる。
- 泰山タイルとの出会いと継承
アンデパンダン壁面を飾るのが、京都・東九条の泰山製陶所(1917–1973)のタイル。
清水焼技術を生かした手づくりの美術タイル。
2023・2024年に同時代ギャラリーで展覧会を開催。
2023年、来場者の家にあった泰山タイルのマントルピースが寄贈され、展示されるという象徴的なエピソードも。
- 現在の同時代ギャラリー
総面積195.6㎡、京都中心の希少な大型展示空間。
週替わりで多様な展覧会が開催される場として機能。
100年の歴史をもつ空間で、過去・現在・未来の表現が響き合う場所となっている。
- これからのビジョン
1928ビル、同時代ギャラリー、アンデパンダンは、
新しい創造が生まれ続ける文化拠点として歩み続ける。
建物を守り、再生してきた人々の思いと職人の技、アーティストの創造力が今も息づいている。
「ここを、文化の灯を絶やさぬ場所に」という願いのもと、このビルは未来へ受け継がれていく。
──────
「1928ビルの百年」取り組み紹介
京都大学 成原隆訓
- 取り組みの概要─100周年に向けて
「2028年、1928ビルは創建100年を迎えます。本プロジェクトはこれまでの歩みを振り返り、未来の100年を見据える取り組みです。
武田五一が創設した京大建築の有志と同時代ギャラリーが協働し、「取り壊しの危機から文化拠点へと蘇った建物」の軌跡を改めて見つめ直すべく、2028年の展覧会に向け調査・展示を行なっています。」
2024年から毎年の展示を開始した。
- 取り組みの方針─文化複合テナントビルとしての1928ビルの30年を再評価する
すでに一定の評価がなされた京都市登録文化財としての「旧毎日新聞社京都支局」。
それに対して、文化複合テナントビルとしての「1928ビル」を評価し直す必要がある。
2025年度は実測とヒアリング調査を踏まえ、制作・展示を通してビルの場所性を再発見する。
- これまでの調査
2024年度─住宅地図によるテナント変遷、登記簿調査による所有者の変遷、CAD図面作成。
2025年度─B1F、2F、3F実測。若林事務所、INDÉPENDANTS、毎日新聞の各関係者にヒアリング。
実測とヒアリングから徐々に見えてくる各時点における変更の過程とテクスチャに残された履歴。
- これまでの発表・報告
助成機関への報告(京都大学 人と社会の未来研究院)
展示の搬出入や日々の仕事の様子を撮影・記録
2025年度展示「100年の走査」(1928年に大阪毎日新聞が京都─大阪─東京へと天皇の即位礼の写真電送を行ったことをきっかけに。どのように100年という捉えがたい時間の長さに向き合うかを今そこに存在している素材と躯体から読み取る試み。)



