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2016.12.15 ニュース, アーティスト・イン・レジデンス

第4回ジュネーヴ展 “COLLECTING TIME 2016” 報告3

アーティスト・イン・レジデンス/京都&Genève 交換プロジェクト

第4回ジュネーヴ展 “COLLECTING TIME 2016”

 

「第4回ジュネーヴ展 “COLLECTING TIME 2016”」の出展作家、武久絵里・笹岡由梨子によるレポート、第3回目をご報告いたします。

*第1回目、第2回目のレポートは以下よりご覧ください。

①「ジュネーブ到着〜オープニングパーティーまで」

②「オープニングパーティー〜Collecting Time撤収まで」

 

③「帰国後、ジュネーブ滞在を振り返って」

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<武久絵里/Takehisa Eri>

 

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・誰かと、帰ってきてから初めて会うとき、ほぼ必ず「スイスどうだった?」と聞いてくれるが、何と答えたら良いかわからない。切り口が無数にある。とりあえず「いろんな人がいた」と答えている。ルーマニア、ベトナム、ギリシャ、ユーゴスラビア・・・出会った人たちが持つオリジンの多彩さが最も印象的だったと思う。そして、笹岡さん。いっしょにご飯を作り、散歩し、朝から夜中まで話し合ったこと。東京と大阪というオリジンの差だけでもこれだけ思想が違う。私たちの組み合わせは本当に有益だったと思う。これからも。

 

 

 

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・フランス語への興味が尽きない。私にとって特別な一つの素材になった。日本語を含め、言語を噛んでいくことへの欲求が加速した。

 

・私が佇んでいた場所はどうなっているだろう。Espace27、cantina、アリアンさんのアトリエ、バスチョン公園のチェス広場、マルシェ通り・・・私がそこにいて、また取り払われたことで、そこ自体が鮮やかになっていたらいい。

 

 

 

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・Usine Kuglerの取り組みは、私が現在拠点としている横浜のクリエイティブシティ事業に通じるものがあると感じている。情報交換を続けたい。

 

・パフォーマンスの記録冊子の作成が、さしあたりやるべき仕事。編集中にも発見がありそうだ。Espace27で行ったパフォーマンスは、今までの興味を総動員できたと感じている。そこからまた触手が増えた。

 

・種まきはいくつかできたと思うので、今後どんな芽が出て、みんなにとっての果実になっていくのか、楽しみにしている。

 

 


 

<笹岡由梨子/Sasaoka Yuriko>

 

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帰国後 アーティスト・イン・レジデンスを振り返って

 

日本に帰国後、時差ボケに苦しむ。2、3日で済むと思いきや、2〜3週間夜に眠れず苦しむ。個人差はあるようで、全く時差ボケを感じない人もいるらしい。
スイスのアーティスト・イン・レジデンスに参加して、驚くほど自分の世界が広がった。近年は1つの作品に構想から1年程かかり、インスタレーションの規模もだんだん大きくなっていた。それは、私にとって良い傾向である反面、悪い傾向であるとも感じていた。なぜならば、規模を大きくするという展開には限界があるからだ。また、ワンパターンだ。そのため、私はサイドワークとして、自分の普段している方法ではないビデオ表現を制作する環境がどうしてもほしかった。アーティスト・イン・レジデンスは、そのための最高の機会だった。見知らぬ土地で、言語の違う現地の人たちや文化・世俗と触れ合い、そのインスピレーションのみで作品を制作したのは初めてだったが、懐かしい感覚があった。子供のころ、身近にあるものが何でも面白くて、その気持ちだけで絵を描いたり、ものを作っていた時の感覚だ。アカデミックな教育を受けて忘れていた、純粋な感動を素直に出力した作品が「Swiss」であった。短期間なのも、余計なことを考えずに出力に没頭できて良かった。スイス ジュネーブは自分が思っていたよりずっと素晴らしい場所だった。人が優しくてあたたかく、自然も美しい。なのに街にはたくさん落書きがあったりで、アンバランスで不思議な魅力がある。その場にあるもの全てがおもしろかった。美術においても、「アールブリュット美術館」には感銘を受けた。自分の、人間としての原点を作品から感じ取った。最初に参加したアーティスト・イン・レジデンスがスイスで本当に良かった。大切なことに気付かされ、思い出させてくれた。これをきっかけに世界中を見たくなった。アーティスト・イン・レジデンスの作品を、色んな国でシリーズ化したいと思う。
そして、まだまだ自分が未熟者であるということ、世界は広いということを実感できた。クグラーの皆さんは、生活の一部のように自然体で作品を作っている。私より10以上年上の方が殆どだったが、キラキラした子供のように綺麗な目をしていたのが印象的だった。アリさんはじめクグラーの皆さんには、本当に尊敬と感謝の気持ちしかない。
このアーティスト・イン・レジデンスの経験は、私に様々な影響を与え、素晴らしい機会を実現させてくれた。支援してくれた両親、クグラーの皆様、一緒にレジデンスに参加した武久絵里さん、そして同時代ギャラリーの皆様に多大なる感謝。

 

 

 

 

以上。

今回の滞在制作では、展示室を2部屋使わせていただいたり、現地の方々と交流する機会を多く作っていただいたりと、より充実した内容であったと思います。今回もジュネーブの関係者の方々には多大なご支援・ご協力をいただきましたこと、改めて感謝申し上げます。

2017年夏には同時代ギャラリーにてスイス人作家による展覧会を、2018年にはジュネーブにて日本人アーティストの滞在制作を予定しております。両国の交流を深め、益々発展したプロジェクトとなるよう取り組んでいく所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

同時代ギャラリー