展覧会情報
櫻井正樹「Old Time specimen」
櫻井正樹
| 場所: | GALLERY GARAGE |
|---|---|
| 会期: | 2026-05-29(金) ~ 2026-06-14(日) |
| 時間: | 19:30-22:00(金)、12:00-19:00(土日月) ※金土日月のみ開廊 |
展覧会内容
この度、GALLERY GARAGEにて櫻井正樹の個展「Old Time specimen」を開催する。櫻井正樹は、街中の壁に現れるひび割れや剥離などの劣化の痕跡をモチーフに絵画・構造物を制作する。その制作は、街を歩く中で見出した劣化した壁の痕跡を撮影し、そこに現れた形状をPhotoshop上で抽出・アーカイヴする行為を起点に置く。抽出した素材は画面上で組み合わせることで新たな劣化の形を生成する。次に生成したイメージをプロジェクターで制作用の壁面に投影し、その輪郭に沿って漆喰で左官する。さらに、別の壁面から採取したイメージを画面にフレスコで描写することで、複雑なイメージが重なり合う絵画・構造物を空間に立ち上げる。
「建物が人間のために存立していることは明らかだ。実に、人は、建物をまず自分と自分の家族を風雨からまもるために造りはじめた。」(※1)櫻井が眼差す壁の劣化は、もとを辿れば人間が自然の脅威から自らや家族を守るために立ち上げた建築物に由来している。そのため、本来その壁は破られてはならない境界を意味し、耐久性が第一に求められてきた。「建造するあるいは創造する人は、かれのつくったものを絶えず分解し、破壊し、転覆させようとする別の世界、自然の動き、を認めざるをえない。この原理をかれは作品に通わせようとする。そしてそれは、作品が滅亡の運命に立ち向かうようにとかれが望んでいるその抵抗力を表現する。だからかれは強さまたは耐久性を探求するのだ。」(※2)しかしながら櫻井は、その耐久性が自然にさらされることで破られた先にある、寂びたテクスチャーや佇まいを帯びる変容の只中に美や偏愛の対象を見出している。
本展覧会「Old Time specimen」は、そうした変容の過程を絵画という物質性を伴った記録媒体(=「古い時間の標本」)に留める櫻井の態度を示している。標本とは、対象を観察・分類・保存するためのものであると同時に、風化していくものを手元に留めようとする欲望の形式でもある。櫻井にとって絵画は、ある場所に生じた時間と現象を保存する記録媒体であり、街中に現れた劣化の形状を画面上に移し替えて保存する標本の役割を担う。しかし、漆喰による支持体はイメージを支えると同時に欠落しやすい物質として画面に介入する。すなわち標本が時間を保存しながらも時間の外部には置かれないように、櫻井の絵画もまた記録媒体であると同時に欠落しうる物質であることを示唆している。本展は、耐久性を備えていた壁が劣化する過程と、記録を担うはずの絵画が劣化を免れない事実を重ね合わせることで、人間の制作物が自然のもとへと帰りゆく静かな時間の相貌を浮かび上がらせる。
キュレーター 谷口雄基
引用
※1 レオン・バッティスタ・アルベルティ『建築論(De re aedificatoria)』より
※2 ポール・ヴァレリー『エウパリノスまたは建築家』より
アーティスト詳細
櫻井正樹 / SAKURAI Masaki
1999年京都府生まれ
2025年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程美術専攻(油画) 修了
街に存在する壁を起点に、フレスコ画の技法を用いながら制作する。壁に発生する自然/人為的な劣化の現象によって、かつてそこにあった意味や機能が擦り減り、徐々にオブジェクト化していく経過に着目している。
過去の主な展覧会
2026年「大本山妙蓮寺春の特別拝観 呼応」(大本山妙蓮寺/京都)
2025年 「やまびこ」(AIR大原Gallery/京都)
2025年「デスクライトエリア」 (Alternative Space yuge/京都)
2024年「そのこえはもっととおくからくる」 (AIR大原Gallery/京都)
2024年「今日の草刈りはここまで」 (GALLERY Ami-Kanoko/大阪)
2024年「地図をもって迷子」 (HAPS HOUSE/京都)
2023年「oneroom’23」(嵯峨美術大学クラブボックス/京都)
2023年「2022年度京都市立芸術大学作品展」「2022年度京都市立芸術大学作品展」市長賞
2022年「見えないところで 光らない蛍光灯」 (マンションみどり/大阪)
2021年「抄本」 (マンションみどり/大阪)
など