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2021.08.31 展覧会アーカイブ, 同時代ギャラリー展示

貴志在介 個展 Blank

【今週と来週のギャラリー】
貴志在介 個展 「Blank」
2021.8.31-9.12
12:00-19:00 (最終日16時まで)
今週と来週に渡り、貴志在介による個展「Blank」を開催している。
2階に上がると、ドアは閉められ、ガラス窓も塞がれているギャラリーの入り口に、「やってるの?」と動揺する方も少なくない。
今回のギャラリー展示は、絵画や立体作品が飾ってあるわけではなく、「インスタレーション」の展示なのだ。まず観客がドアノブを捻ってドアを開け、自ら空間の中に入ることから始まる。
なんであればドアの前に置いているステートメントを一読して入っていただくことをおすすめする。
ドアを開けるとなぜ、ギャラリーのドアを閉めたままでいるかすぐ分かるはず。
そこにはブラックライトに照らされた額縁の数々。額縁の中にはなにもない。「Blank.」なのだ。
訳もわからず、また興味もなく通り過ぎていく人、居るだろう。それでも構わないと思う。
「なんで?」「なにこれ」が一瞬でも頭を過ぎてゆくだけでも、この展示には意味がある。
歩いて見てまわる、ただただ無。必ず観客は考える。「なぜなにもないのか」「なにこれ」・・・だいたい疑問符だ。
部屋の真ん中に長椅子を置いている。作家の貴志在介は、その椅子に座って飾られている無の額縁の群れを眺めてほしいという。何もかかれていない額縁、その群れを眺めているとだんだん自分も空虚になっていくような・・・ならないような・・・。
そして奥の小部屋、布をまくって入ると映像が上映されている。作家によると「その動画を見れば僕がどうしてこの展示にしたか分かるようになってる。答え全部書いてある」とのこと。
動画は作家から観客への「問いかけ」だ。
あなたにとって、作家にとって、「Blank」であることはなんだというのでしょう。
ちなみに、私の妹(のような友人)は、動画を見て「重たくなってきちゃった」とのこと。
いつだって自己への問いかけというのはハードなものだ。
そしてそこから生まれる感情、そして文学や芸術があるものだと私は思っている。
あとみにいらっしゃるなら夕方ごろからがおすすめ・・・かも。蛇足。
同時代ギャラリーでは、8 月 31 日から 9 月 12 日にかけ、4 回目となる貴志在介のインスタレー ション作品の展示を予定しております。貴志は当ギャラリーで、「SNS などの情報メディアを扱う 現代が抱える問題」をテーマに創作してきた作家です。 今展では、ギャラリーという特異な空間を使い、これまで情報が溢れ出ている世界像とは真逆の、 情報のない空間インスタレーションを展示する予定です。
<ステートメント>
今展のタイトル「Blank」とは、白紙の、空白の、白地式の、無記名の、からの、うつろな、窓や戸口のない、空虚な、からっぽの、単調な、などを意味します。
なぜこのタイトルなのかと言いますと、今展では額縁を使ったインスタレーションを行う予定ですが、
それら額縁の中には何も描かれていないからです。
その情景は空虚であり、フレームが空間を圧迫すると同時に見るべきものはなく、ただただ空虚な空間を作り出します。その空間には普段のギャラリーという場所を考えれば、本来あるべき絵やイメージが存在したはずです。
しかし、それは失われている、もしくはそもそもそんなものは無かったのか。
空しい情景がある一方で、これらが作り出す情景は白紙であるからこそ、作り出せる可能性や自由も意味しているのではないか。
そんな白紙の絵画に私なりのメッセージを込めたインスタレーション展示を行う予定です。
ご都合等がつけば、是非ともご高覧くだされば幸いでございます。
貴志在介
Arisuke KISHI
1983 京都府に生まれる
2008 京都精華大学卒業
<個展>
2013 貴志在介~言の葉いずる表情者たち~/ギャラリー自由空間
2015 KISHI Arisuke Solo exhibition -The tribe-/同時代ギャラリー
    貴志在介 -uneven- 展/京都ギャラリー悠玄
2017 貴志在介写真展-だーれだ。- /ART FORUM JARFO
    Metamorphose -この醜くも美しい世界- /同時代ギャラリー
2019 メメントからモメントへ モメントからメメントへ /同時代ギャラリー
2021 菊池ルイ× 貴志在介 二人展 外出武装/同時代ギャラリー
<公募展・グループ展歴>
LINK展/京都市美術館(2004~2019年まで毎年出品)
京展 彫刻部門(2005、07、09、13、17)、版画部門(2013)
アートレインボープロジェクト/ドイツ (2013)
EAST-WEST ART AWARD2015/La Galeria/ロンドン(2015)
DIESEL LIVINGINSTALLATION THE WALL by GENETO Architect’s/東京渋谷DIESEL(2017)
第4回藝文京展/京都芸術センター(2018)
Kyoto Art for Tomorrow 2020、2021 ー京都府新鋭選抜展ー他
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扉を開けると暗い部屋の中、ブラックライトが何かを照らしている。
そこはBlankの空間。
何も描かれていない黒い額縁たちがギャラリーの壁を埋めている。
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中心に大きな額縁。その周りを縦横中小の額縁が囲っている。
よくよく見ると中心の大きな額縁は、絵画の額縁の紋様が象られている。
本当に、よくよく見ないと気づかない。
小部屋に入ると、映像が上映されている。
四条大橋の橋の上、ただ女性がこちらに背を向けて立っている。
いくつかの作家からの問い。
最後に女性は歩き出す。手には食材のようなものがたくさん入ったスーパーの袋。
見えなくなるまで映している。
小部屋の映像の向かいの壁には、暗闇の中でも、黒く塗られているわけでもない、
だけど中身は何もない額縁が飾られている。
キャプションは”Blank”になっている。
スタッフの友人が遊びにきたので、大きい額縁の前に立ってもらって写真を撮った。
なにかモノが入ることで見方が変わったりするのかな、と思った。
だけどスタッフが思うに、やはりどこか掴めない。入ったモノが、
その額縁にとっていらないもののように思える。
この空虚な空間が、スタッフにそう思わせているのだろうか。
2週間の展示、たくさんの方にお越しいただきまして、誠にありがとうございました。
同時代ギャラリーには珍しいインスタレーション。
楽しんで頂けたなら、思うことがあったのならさらに、幸いです。
今後の展示もどうぞお楽しみにー!