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2021.02.02 展覧会アーカイブ, コラージュプリュス展示

中内渚 個展 旅時間 −Trip Time−

【中内渚 個展 旅時間 −Trip Time−】
会期:2021年2月2日(火)〜2月14日(日)※2月8日(月)休廊
時間:12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
展示室:コラージュプリュス

 

 

 

海外で手に入れた古書に、旅先の風景や植物を鮮やかに描き出す画家・中内渚。
本展では古書作品とともに、現地での出逢い、歴史、心象風景など「絵の背景となったエピソード」を添えております。この鑑賞体験が一層深まり、皆さまご自身の旅体験となることを願って―。

はじめての場所を訪れ得られる高揚感、気づき、刺激、痺れるような感動、リフレッシュや安らぎ…たくさんの感情・豊かさを織りなす旅時間に思いを馳せながら、この日々を少しずつでも前に進んで行けますように。
楽しいひとときを過ごしていただければ幸いです。

 


 

〈ご挨拶〉

こんにちは。
古本に絵を描く、画家の中内渚といいます。

海外で手に入れた古書に、旅先の風景や植物など、
旅で出会った印象的なものを描いて回っているのですが、
テーマは、「その美しさに痺れるように「ぐっ」とくるのかどうか」。

世界各地、心を捉えた瑞々しい美の瞬間を、絵にそのまま閉じ込めています。
ぜひ心行くまでお楽しみください。

・ ・ ・

なぜ古本なの?
古本に描くってどういうこと?
他にどんなものを描いているの?という方は、
ぜひ公式サイト( https://www.nagisa.asia​ )を覗いてみてくださいね。

また、絵を描きに訪れた旅先の「絵の旅行記」も展示・販売しております。
ぜひごゆっくりご覧頂けたらと思います。

 

 

〈自己紹介〉

私は小さい頃南米に育ち、隔年で親に連れられヨーロッパを放浪するなど、気づけば異文化の風に様々に吹かれてきました。

その異文化の中で心をわしづかみしてきた数々のカルチャーショックや人との触れ合い、温かさ、喜び、シビアなひりひりする感覚、不条理、飛び上らんばかりの楽しさ、学び、ときめき、想像もしなかった美しいものたちとの出会いと憧れ‥このたくさんの溢れる感情が行き場を求めて行った先に、
自然といつも、スケッチブックがありました。

私にとって絵とは、その溢れる心が結実したもの。
描くことで私はこの感情を取り込み消化することができ、
そしてかけがえのない「今この瞬間」を永遠のものにできるのです。

そしてなんといっても。
「この”今”の素晴らしさ、面白さ、楽しさ、感動をどうしてもみんなと分かち合いたい」
「この(モチーフの)凄さを伝え切りたい」
「(旅先やモチーフの様々をお伝えして、)一緒に幸せになりたい」
という感情がなぜか小さい頃から私の中心に強烈に、しっかりとあり続けて、
今も泉のようにこんこんと湧き出るのです。
いつまでも変わらず私の源であり、すべてを生み出す原動力です。

どの絵も、高揚する心とときめき、あらゆる美しい感情が織り交ざっています。
ぜひ一人一人の方にとって、幸せな何かを引き出す存在となれればと願っております。

 

 

〈中内 渚 / Nakauchi Nagisa〉
画家 / 旅行記作家

1979年生まれ。90年や100年も前の古書に描く画家。
幼少期アルゼンチンに育ち、異国世界の魅力に開眼。
海外体験を通し独学でスケッチを始める。
東京外語大スペイン語学科卒。

2008年には、ピラミドン現代アートセンター(バルセロナ)に招待アーティストとして招かれ滞在、制作に取り組む。
南米パラグアイでの個展を皮切りに、子供博物館国立ギャラリー(コスタリカ)、在日スペイン大使館、Ivy Brown Gallery (ニューヨーク)、 LOEWE銀座本店、島田美術館ギャラリー、新宿伊勢丹本店アートギャラリー、セルバンテス文化センター東京等にて個展。

ハリウッド化粧品の化粧品ライン「ナチュラルEx」のパッケージイラスト等メインビジュアルを担当する。2017年には日本パッケージデザイン大賞2017 入賞。また自身の絵を使用したカレンダーが全国カレンダー展2016にて、第二部門銀賞受賞。
著書は「スケッチで旅するスペイン」(エディマン)他。

近年は、中内渚の旅スケッチ、旅行記や絵の束を購読できる「スケッチ旅便」をプロデュース。鮮やかなスケッチで旅の臨場感をダイレクトに伝え、アートが手元に届くと人気が集まっている。
※会場に展示していない絵は公式サイトにてご覧いただけます。

https://www.nagisa.asia
Instagram:@nagisanakauchi

 

 

*遠方の方も作品をお楽しみいただけるようYoutubeにて作品の動画を公開しております。
動画はこちらから(♪BGM鳴りますので音量ご注意ください)
https://youtu.be/v1B5SvD-bzI

 

今回、12:00-15:00の時間でzoomにてチャットをつなげたり、質問カードなどを設置したりと、間接的にですが、作家の中内さんと交流できる機会を設けました。

 

各作品の「絵の背景となったエピソード」を下記に記載しております。
ぜひスクロールしてご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈各作品について〉

 

 

 

『輝くジヴェルニー』
古書に水彩、油絵具、ボールペン

 

私、思ったのです。

私はモネの絵が好きなのですが、
もし自分が同じモチーフを見たならどんな風に描くかしら?と。

それをテーマに引っさげ訪れたフランス旅。
そこで描いたモネの庭が、こちらの絵です。

5月、
そこははち切れんばかりの緑と花々の息吹でいっぱいの、
花の園でした。

きらきらと輝くような陽光をいっぱいに浴びて、
すべてが幸せ、幸せとさざめいているようで。

春の訪れを祝う花々の饗宴を眺めるかのようでした。
うっとりと、人々はそこに飲み込まれて。

そこで一日中描きに描き、私なりのモネの庭シリーズが生まれました。
水彩画の上に油絵も乗せて、こってりと塗った、厚みのあるものが多めです。

「モネはなるほど、ここを見たからこういう風に描いたんだ」
「これがモネの見た色彩、日差し‥」
そういう感慨と出合う、フランスでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レモン』
古書(シャガールの、パリの版画本)に水彩、ボールペン、ガッシュ

 

スペインって歴史上のある時期、イスラム圏になっていたこと、ご存知ですか?

711年~1492年、地中海を挟んでスペインの向かいにあるアフリカ大陸からはたくさんのアラブ人たちが移住したのです。
当時世界でも最先端だった数学や哲学、科学をスペインに持ち込み、書物はスペインで翻訳されてヨーロッパ中へと伝えられ、なんとヨーロッパの文化的中心地・超先進国だったのでした。

さてそのスペインの東に浮かぶマジョルカ島。
そこには当時のアラブ人たちがアフリカ大陸より持ち込み、置き土産にしていったとあるモノが今も残っているのです。
今ではマジョルカ島の名産品なのですが、
それが、レモン。
その当時からずっとずっと栽培が続いていて、根付いているんですね。

それにしてもこのレモンの黄色を見ると、心がいつでもマジョルカへ飛んでいくようです。
さわやかなからっとした空気、紺碧の地中海の青。
溢れるような緑。そして日差し。
絵の向こうに透けて見えるようです。
私にとって、幸せの象徴のような絵です。

 

 

 

 

 

 

 

『La boquería』
古書を印刷、その上に水彩、ガッシュ

スペイン・バルセロナの市場、通称ラ・ボケリーア。
2月に訪れてみると、辺りはいつもとは一変、色彩の洪水のよう!!
カーニバルのお祝いの真っ最中でした。
ひしめく八百屋やくだものやさん、さかなやさんetc.
頭上にはびらびらとたくさんの飾りつけ。
美しくて、カラフルで、目の回るような楽しさ!

店主たちもばっちり燕尾服・キャバレーの仕様に様変わりして、
笑顔のピエロがガンッガンに肉をさばいている…。ウケる‥。
なんかもう、魅惑のワンダーランドが繰り広げられていてわくわくぞくぞく。
毎日がこうだったらいいのに!

 

さてここでクイズ:
①卵やさんはどこにあるでしょうか?
②アスパラを持ってお買い物中のおじいさんはどこでしょうか?(答えは下↓)

 

 

 

 

 

 

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クイズの答え:
①絵の左端の店
②絵の右端にある人のグループの中、右から4人目

 

 

 

 

 

 

『情けない男の子』
古書を印刷、その上に水彩、ガッシュ

 

スペイン3大祭りのひとつ、バレンシアの「火祭り」。
メルヘン一色に染まるこのお祭りでは、
たくさんのカラフルなはりぼてが街中をひしめき埋め尽くし(その高さ、ビルの5階以上も)、
そして民族衣装の老若男女が闊歩します。

面白いのは、赤ちゃんからおじいさんまで全世代がパレードしてゆくところ。
日本と何が違うって、どこの世代よりもおじさんおばさんたちが大はしゃぎで、誰よりもハメ外してるとこ(笑)。
なんなら、子供たちよりずっとはしゃいでいる‥どういうこと!

見れば両手に花なはずの少年が情けない顔で歩いている。
なんかスペインの縮図を見ているようでなんとも言えない。
ちょっと笑えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『とっておきの広場』
古書を印刷、その上に水彩、ガッシュ

 

 

スペイン・バルセロナの私のとっておきの広場。お気に入りの広場です。
市場の裏にある、陽の良く当たる一角。
春うららかなある午後のひとときです。
(まるで見た目、秋みたいですが!)

この当時の私はバルセロナで生活をしていて、
毎日の楽しみは「最高にお気に入りのカフェ」探し。

せっかく外国に住んでいるのだから、
テキトーなカフェじゃなくて、「ここぞ!」と、
気持ちがぞくぞく喜ぶようなところを見つけてお茶をしようと考えたわけです。
日々ハードルは上がっていって、どこに行っても妥協を許さず‥
ついにはかなり歩いて一度もお茶をせず帰るという日もあったくらいです。

そんな中、この広場は私の見つけた素晴らしくお気に入りの場所。
この絵の中の赤いテーブル。
外にポンと置かれたこのテーブルで、まったくの吹きさらしの外の空気を心地よく感じながら、バルセロナを感じながらのコーヒータイム。ここ、バルセロナにいる感慨もうれしさもひとしおなのでした。

そこで人心地着くように、ほっと一息つくような気持ちで、ぜひ絵をご覧ください。
今の世のストレスが少しでも癒されますように。

 

 

 

 

 

 

 

『Tropical gorgeous』
古書の上に水彩、アイライナー、ガッシュ

 

 

こちらはバリ島の花々。

極上の、熱帯の色彩。
否が応にも心がかき乱され、熱くなるような、
そんな何かを発していますよね。

バリ島では道端に散っている「はなびら」さえ宝石のようで、
何度それらをかき集めたことでしょう!

信じられないような極彩色が、
おおぶりの花たちが、その華やぎを捲き散らし、
いつでもこちらの心を美しく染め上げてくれます。

この絵のお花は、「お庭で摘んできました」と、
言っていたある女性の手からこぼれるように顔を出した花々でした。
あの美しき一瞬が今も忘れられません。

わーー!とこみあげるような「美」の喜びの瞬間でした。

 

 

 

 

 

 

 

『エーゲ海』
古書に水彩、ボールペン、ガッシュ

あちこち海外を描いて回っている私ですが、
どこよりもダントツに浮世離れして、あの世にいるかのような崇高な景色に出逢ったのが、
ギリシャのサントリーニ島でした。

ここは本当にすごい。
想いも付かないような、想像の向こう側の世界。
ちょっと天上界に足を踏み込んでしまったかのような。

そして午後の太陽ぎらぎらの時間には、この目の覚めるようなブルーと出合いました。
それにしてもなんという青。
真っ青。青々と、深々と、荒々しく、豊か。

わわわ、と迫るような迫力。

自然の威力に圧倒され続ける…そんな景色がどの時間帯もずっと続く。
本当にすばらしい体験でした。

さて、ここでクイズ。
このサントリーニ島は紀元前1500年頃、海底火山の大噴火により今のこの地形へと変貌を遂げました。
その際は津波が引き起こされ、人類史上最も記憶に残る大爆発だったと言われています。
さてその時の津波の高さは何メートルと言われているでしょうか?(答えは下↓)

 

 

 

 

 

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クイズの答え:200m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぬいぐるみ』
古書に水彩、ボールペン

 

この絵を見て、どの国の絵かわかりますか?

この、モノというモノが山のように積み上がり、
上からは大量のモノがぶらさがり、もうモノで溢れんばかり、
っていうこのカンジは、まさに中米メキシコの傾向そのもの。
もー、物の溢れ方がすごい!(でも大好き)

メキシコシティ最大の市場には、バナナの実だけの市場があったり、バナナの葉だけの市場があったり(!)、
籠だけ、鍋だけ、ハーブだけの市場があり、噂によるとかき氷の市場もあるんだとか。
そしてなんと、盗品だけの市場もある…(笑)。
現地の人は、何か盗まれたらその市場に行くんですって。
盗まれたモノがそこで見つかったりするんだそうですよ。
ともかくここの市場というのはエネルギーが目いっぱいに詰まっていてはちきれんばかりです。

そして描いたのは、クリスマスプレゼントだけがごったがえしていたプレゼントの市場。12月のこと。
その中のぬいぐるみのお店が、この絵なんです。
なんといってもサイコーだったのが、中央に座っているこの青年。
イヤなのに親に店番を頼まれたのでしょうか、完全にふれくされております。