展覧会情報
 
					ひょっとして庭
小坂美鈴・中嶋純花
キュレーター 谷口雄基
 
						| 場所: | ギャラリービス | 
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| 会期: | 2025-09-30(火) ~ 2025-10-05(日) | 
| 時間: | 12:00-19:00 最終日17:00まで | 
展覧会内容
家のすぐ近くに家庭菜園をしているおじさんがいる。そのおじさんは毎朝育てているミニトマトの前に出てきてはまだ実になっていない新緑を眼差して嬉しそうに微笑んでいる。その表情を見ると誰かからの承認を受けるために育てているのではなくて、ただ目の前にある事物と触れ合う孤独の時間を楽しんでいるように見える。私はその前を通りかかったときに生まれる刹那的な会話がちょっとだけ好きだ。辺りをフラつく名もなき蝶と蜂と私が並ぶように偶然の出会いが生まれては流れていく。家庭にはそんな私的な領域と公的な領域を繋ぐ「庭」がある。
本展覧会は、事物の制作を通じて私的な領域の延長にある公的な領域(=「庭」)を二人のアーティストと共に立ち上げる試みである。小坂美鈴は、家の中にある私生活の写真を裁断することで自身の身体の形に編み上げる。それらは会社員として労働に従事することで後ろに追いやられた私生活と身体性を自らの手の内に取り戻す行為である。生み出された新しい身体は、家や会社でもない豊かな事物に満ちた展示空間に出かける。中嶋純花は、「無名の風景」を描く日本画家である。富士山や天橋立などの有名な風景ではない日常にありふれた風景を描く。それらは特定の共同体や経験を共有していない人に対しても同様に開かれた提示可能性を持つ。岩絵具による色鮮やかな筆致は偶然訪れた身体を遊ばせる余白がある。
異なるアプローチからなる作庭のあり方には、ずれをはらみながらもそれゆえに思いがけない包摂の場を開く。フランスの庭師であるジル・クレマンは語る。「創出は生じるままにしておくこと。ある創出に、また別の創出が続いていくから。」会場で付着した何かを外に運び出してくれたなら、それは誰でもよいあなたの制作へと続いていくことになるだろう。
キュレーター・谷口雄基( @minimum.taniguchi_yuki )
アーティスト詳細
小坂 美鈴 Misuzu Kosaka ( @kosa.misu )
2000年大阪府生まれ。2025年京都芸術大学大学院芸術専攻美術工芸領域染織テキスタイル分野修了。同年6月からアッセンブリッジ・スタジオ2025に参加。現在は自室を撮影、その写真を印刷し編み、自身の身体と重ね合わせて立体にする作品を制作している。工業製品や写真などの人工的な素材を使用し、一貫して「編む」行為を軸として制作をおこなっている。「編む」という行為を、あるものを別のものに変換する人間にとってもっとも原始的な方法のひとつと捉え、そこに内包されている時間や労働性に着目している。
2025.8  触れることについて(Zui+LIM、京都)
2025.6  個展『編集すること』(KUNST ARZT、京都)
2025.2  DOUBLE ANNUAL 2025「アニュラスのじゃぶじゃぶ池 ─ omnium-gathrum」(国立新美術館、東京)
2025.2  京都芸術大学卒業・修了展(京都芸術大学 F201北、京都)
2024.12  個展「生 活 の つ ぶ て」(同時代ギャラリー コラージュ・プリュス、京都)
2024.12  DOUBLE ANNUAL 2025(京都芸術大学 ギャルリ・オーブ、京都)
2024.10  pile up(京都芸術大学 NA1F、京都)
2024.7  ARTAOTA 選抜展(アンスティチュ・フランセ関西、京都)
2024.7  SPURT 2024(京都芸術大学 ギャルリ・オーブ、京都)
2024.6  2024年度ギャルリ・オーブ公募展「現在地の視座」(京都芸術大学 ギャルリ・オーブ、京都)
2024.5  第46回日本新工芸展 第7回学生選抜展 (東京都美術館、東京 / 京都市京セラ美術館、京都)
2024.2  大学院修士課程有志展「いちめんのなのはな」 (京都芸術大学 NC501-503、京都)
2023.10   ART AOTA 2023 (九条湯、京都)
2023.9  HOP 2023 (京都芸術大学 ギャルリ・オーブ、京都)
2023.2  京都芸術大学 卒業・修了展 (京都芸術大学 NC103、京都)
2022.4  MILESTONESー余白の図案ー (京都市勧業館みやこめっせ、京都 / 阪急うめだギャラリー、梅田)
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中嶋 純花 Sumika Nakajima ( @sumi__ka_87 )
2001年京都府宮津市に生まれる。2025年京都芸術大学大学院芸術専攻美術工芸領域日本画分野修了。再興第110回院展入選を機に日本美術院「院友」に推挙。また、関西院展研究会に所属している。
現在は「無名の風景」をテーマに制作を続けている。「無名の風景」とは、富士山や天橋立といった誰もが知る名所ではなく、日々の暮らしの中にさりげなく広がるごくありふれた景色のことを指している。目の前の自然に触れながら写生し、その体験を自らの記憶や感覚と共に描くことで、特定の土地や共同体に縛られない誰もが自身の体験と重ね合わせることのできる風景を目指している。
主な展示歴
2019年
グループ展「現代っコ展」同時代ギャラリー
2021年
グループ展「ねことまるくなる」ねこのてCafe
グループ展「Re.」スリースター京都
グループ展「同時代展」同時代ギャラリー
2022年
個展「ハナパレード」 友愛診療所
2023年
2023年度京都芸術大学卒業展
第78回 春の院展
グループ展「春うらら 顧洛水と仲間たち」  ちいさいおうちギャラリー
第13回上賀茂神社アートプロジェクト
再興第108回 院展
2024年
個展「わたしの故郷で展覧会をします」 浜町ギャラリー
第79回 春の院展
グループ展「彩iro」錦鱗館
再興第109回 院展
グループ展「-京都・院展俊英作家グループ展-京TSUNAGU 未来」京都髙島屋S.C. 美術画廊
個展「ひみつきち」 同時代ギャラリー
